Updated Date: 2019-07-19 13:01:18

キャリアガイド~洋菓子業界について~

聖徳大学短期大学部総合文化学科 准教授 佐藤利枝子

著者プロフィール
香川栄養専門学校ホテルテストラン科卒、調理、サービス、マネージメントを学ぶ。 フランス「エコールルノートル」にて製菓全般を学ぶ。ホテルの製菓部門、フラン ス菓子店シェフ、専門学校講師を経験し、平成14年より本学で製菓実習の授業を 担当している。
「手づくりチョコレートBOOK」著

今年の2月末に陸前高田の中学校から、『4月に修学旅行の1日を使って自主研修をおこなうにあたり、職業体験で製菓に興味のある生徒が貴校への訪問を希望しているので、受け入れていただけるか。』と連絡がありました。私たちスタッフは準備をして、どんな中学生に会えるのかとても楽しみにしていましたが、震災により修学旅行は中止となりました。

そこで、会えなかった皆さん、それから、お菓子作りに興味があるけれど、洋菓子業界はどんなの世界だろうと思っている人に、キャリアガイドをしたいと思います。

いま、日本ではイギリス、ドイツ、オーストリア、フランスなどのヨーロッパ菓子が居ながらにして、味わうことができます。中でもお店の数が圧倒的に多いのはフランス菓子です。私もフランス菓子を学んで、作り続けている1人です。以前は菓子職人と言われていた私たちも、この頃はパティシエと言われるようになりました。パティシエという言葉はフランス語で「粉をこねる人」という意味です。転じて菓子職人のことを言います。菓子店はパティスリーといいます。日本でパティシエという言葉が一般に知られるようになったのは、1993年から‘99年まで放送されていた「料理の鉄人」というTV番組の影響からだったと思います。ちなみにコックさんはキュイジニエと言います。

パティシエの働く職場形態としては、①個人店、②チェーン店、③工場、④ホテル、⑤レストランが主なところで、自動車工場のような大規模な職場はありません。

  • ①個人店ではご主人が経営者兼シェフで、大抵は奥様が販売を担当しています。
  • ②チェーン店は会社組織になっていて、製造は各地区にある工場でおこない、デパートやショッピングモールなどにある店舗に配達して販売をします。フルーツを乗せたり、クリームを絞ったりする仕上げだけを店舗内で行う場合もあります。
  • ③この場合の工場とは販売店を持たないで、委託された商品を作り、卸売しているところです。
  • ④ホテルでは館内のコーヒーショップで販売するケーキ、レストランでの食後のデザート、パーティーに出すデザートをつくるための製菓部門があります。
  • ⑤レストランは、規模は小さいですが、ホテルと同様です。(大抵はパティシエが1~2人でキュイジニエが兼任していることもあります)
①~⑤まで分類しましたが、パティシエたちはこのような職場で働きます。

パティシエになる為の資格は特に必要ありません。中学や高校、大学を卒業してすぐに働きだす人もいますし、調理師養成の専門学校を卒業して調理師の免許を取得してくる人もいます。製菓専門学校卒業の人は卒業後、製菓衛生士の試験を受けて合格すると製菓衛生士の免許が得られます。専門学校に行かなくても調理師や製菓衛生士の免許は取得可能です。それは現場で2年以上働き、職場の就業証明があると、各都道府県でおこなう調理師試験、製菓衛生士試験の受験資格が得られますので、教本を買って自分で勉強して、試験を受けます。試験科目は7科目ですが、共通するのは食品に関する知識と食品を衛生的に取り扱うための知識が問われるのです。なぜ資格を取るのかと言うと、人さまの口に入るものを扱うのですから、衛生に対する厳しい態度が必要だからです。

パティシエになるには先にあげた5 つの形態の職場のいずれかの扉をたたき、試験を受けることです。仕事を早く覚えて一人前になりたければ、個人店がお薦めですし、職場環境の良さではホテルでしょう。レストランでは即戦力が求められるので、経験者の求人が多くなります。

工場やチェーン店では大量に生産するシステムを学べるかもしれません。個人店やレストランの求人はインターネットで製菓関連の求人サイトがいくつかありますのでそこから調べられます。また、お店のホームページを見て直接問い合わせる方法があります。

日本の洋菓子業界の組織としては「社団法人日本洋菓子協会連合会」「協同組合全日本洋菓子工業会」という組織があり、それぞれガトー、PCG という業界誌を発行しています。これらの会では現地での勉強会を組み込んだ海外研修旅行をおこなったり、国内での講習会や啓蒙活動、コンクール開催など菓子業界を支える活動をしています。

経験を積んだら本場で学ぼう。一口にお菓子と言っても分類すると、ケーキ、チョコレート、アイスクリーム、砂糖をたくさん使う糖菓、菓子パン、装飾のための飴細工など、それぞれ専門の技術と知識が必要です。フランスには経験を積んだパティシエのための学校が数校あり、フランス人のみならず世界中から、技術を学びに来ます。生徒は若い人ばかりではありません。また、フランスの菓子店で修行するにはワーキングホリディ(18歳以上30歳未満)を利用して現地で就業することが可能です。このような可能性を活かすために、英語かフランス語を学びましょう。

継続は力なり。パティシエの仕事を続けるなかで、地域の方に親しまれるお菓子作りを目指すひと、シェフになる人、コンクールで他国の人と競い交流する人、独立開業する人など、パティシエのスタイルもいろいろですが、共通しているのは食べた人が「美味しい」と言って喜んでくれるお菓子をつくることだと思います。
『皆様の喜びとともにあること』が私たちパティシエの力となるのです。

最後に、夢のある楽しそうな職業に思えるかもしれませんが、世の中の人が休暇やイベントで楽しんでいるときが忙しい時ですし、長時間労働で、肉体的にきついです。身体を動かして働くことをいとわない人が向いていると思います。

以上が今回会えなかった中学生の皆さんにお伝えしようと思っていた内容です。このたびの震災で、並々ならぬ体験をしていることと思いますが、自分の中にある力を信じて将来の事を考える時間を持っていただきたいのです。

「お・い・し・い・シュークリームをつくる」授業のデモンストレーションをビデオに撮りましたので、総合文化学科のページに張り付けておきます。是非ご覧ください。

Editor: 山下 伸夫
Updated Date: 2011-07-11 18:22:04