Updated Date: 2019-07-19 13:01:18

技術を生かした美味しいお菓子作り
―キャリア教育による企業活動への参加― (佐藤利枝子)

(本稿は「社団法人日本フードスペシャリスト協会会報(第37巻:平成23年05月)」に掲載されたものです)

短期大学で製菓技術を学ぶ

製菓専門学校は多数あるが、女子短期大学の専門課程で製菓技術を学べるところは全国でも稀である。

本学の製菓コースは平成14年に短大の生活文化学科に設立され、平成18年に2 学科を統合して開設した総合文化学科(総合文化学科は10ブランチで構成されている)の中に製菓ブランチと名称を変え、現在に至っている。

卒業までの実習単位数は製菓(西洋菓子)10単位、製パン2 単位、シュガークラフト4 単位で、時間にすると1 日3 コマを週に2 日間、2 年間おこなう。製菓の学生はフードスペシャリストの資格取得科目を含んだ必修科目を学ぶが、不足の科目については選択枠で履修している。

実習で重点を置いているのは、実際に商品として販売できる品質を保証すること。そのためには良質の材料、清潔な環境、確かな技術を大切にしている。材料ではバター、生クリーム、冷凍フルーツ、リキュール、加工材料などはプロ仕様の物を使用しており、作り手である学生の味覚を育てる一助にもなっている。学内には専用の製菓実習室があり、フランス製オーブン、国産パン用オーブン、ドウコンディショナー、冷凍庫3 機、冷蔵庫4 機、実習台12テーブルを備えている。洋菓子実習では1班2〜3人で課題の菓子を共同で作る。フランス菓子を中心に2年間で約120種取り上げるため、基本的な菓子は網羅しており、フランスのプロフェッショナルスクールのメソッドを取り入れて指導している。

学生が菓子を実売する機会は、現在、学園祭の2日間である。学内で営業している喫茶店を借りて学生たちが運営する店を開き、ケーキと焼き菓子の販売をしている。5 種類のケーキを、2 日間で800人前、紅茶と共に提供する。来校者の中には出されたケーキが、「女子学生が作ったもの」とは思えないらしく、誰が作ったのか、どこで仕入れたのかと質問される。その他、12〜13種類の焼き菓子の詰め合わせを160箱製造、販売しているが、毎年数分で完売するため、数が足りないと来校者から苦情の出る程の人気商品になっている。

キャリア教育

総合文化学科では設立時の平成18年度より、キャリア教育に取り組み始めた。その年、文部科学省の特色ある大学の取組を育成、支援する「現代GP」に「人間力を養成するユニット別キャリア教育─社会に貢献できる自立した女性の育成」で応募し、採択され、平成22年度まで5年間継続した。平成22年度はプログラムを見直し、これまでの実績を発展継承する内容の「実学・実践による女性のコンピテシー(仕事力)育成」プログラムを策定、文科省の「就業力育成支援事業」に応募し、採択された。

コンピテシー育成のひとつとして、地域産業界との連携による実学的・実践的教育カリキュラムを新設した。企業活動の内容や仕事を理解し、働くことが社会に貢献することだと思えることを実践するという目的の中で、昨年9月10日に千葉興業銀行が主催する千葉県食材見本市「千産千商2010」に参加した。大学構内を利用して、企業は商品展示と商談、販売をおこない、調理と製菓の学生は提供食材を使った料理や菓子を作って来場者へ試食のサービスをし、他ブランチの学生は会場運営に携わった。学生たちは企業の方と直接話をして共に働き、地元企業の商品や活動について理解を深めることが出来た。

「千産千商2010」地元食材を使った商品提案

本学が立地する千葉県は、農業、漁業が盛んな県である。主要農産物産出額では全国第3位(H.20年度農林水産省統計)で、食卓に上るほとんどの野菜が作られている。

夏休み前に企画に入り、学生が着目したのは生産高の多い野菜と落花生で、蚕豆などは開催時期に市場からなくなってしまうため、材料を確保し、茹でて急速冷凍にかけた。製作にあたり、出店業者より提供いただいた千葉県産食材は卵、牛乳、落花生、人参、新生姜、トウモロコシ、蚕豆、梨のピューレ、白玉粉である。

開発した菓子は以下の6品となった。 - 千の葉:箱詰めのお土産品をイメージした商品で、729層に折ったパイ生地に、刻んだ落花生を散らしてロール状に巻いてカットしたものを、グラニュー糖を敷いた台の上で楕円形に伸す。これを高温のオーブンで表面の砂糖がカラメル状になるように焼いた手間のかかった菓子になった。 - (船橋)人参のシフォンケーキ:人参嫌いの子供が食べられるよう、また、朝食向けのスィーツとして栄養バランスを考えて、クリームチーズを生地に散らして焼いた手軽に作れる家庭菓子である。 - 生姜風味のアーモンドケーキ:アーモンドペーストに糖蜜煮の新生姜をきざんで加え、少しずつ卵を加えて含気させた生地を半円の一口サイズに焼いたもので、古典的なフランス菓子の構成になっている。 - トウモロコシのグジェール:シュー生地にトウモロコシを練り込み、チーズをのせて焼いたもので、ワインに合いそうな一品になった。 - 蚕豆のパウンドケーキ:蚕豆の澱粉質を生かして和菓子の浮島に似た新食感のパウンドケーキにした。 - (松戸)梨の求肥もち:(教員の提案品)日本梨を白玉粉と混ぜて蒸し、さらに練り込んで求肥にし、優しい甘さを出すことができた。

   1年生も参加する提案商品の製作

これらは、素材の本質に迫る段階のものではないが、既存の製法を生かして工夫した美味しい菓子になった。一般の方を含めて約800名の来場者に喜んで召し上がっていただくことができた。しかしながら、製品コンセプトが良く伝わらなかった不満が学生たちに残り、限られた条件の中でのプレゼンテーションのありかたを学んだ。レシピはWeb上に公開している。また、この取り組みにより企業の方から連携のお話をいただき、今後の活動の励みになっている。

自分たちの手で生み出したもので企業活動に参加した経験は、仕事力育成につながったことと思う。

就職率の向上を目指す事はもちろんであるが、将来、地域の担い手となる人材育成につながることを願っている。

Editor: 山下 伸夫
Updated Date: 2011-06-28 17:44:08