Updated Date: 2017-09-19 16:00:44

災害時の衣生活(被服整理学)

聖徳大学短期大学部総合文化学科 教授 伊藤一郎

著者プロフィール
1958年東京工業大学卒業。帝人(株)繊維加工研究所、加工技術部、インドネシアSCTI社出向(染色工場長)を経て、現職。専門は、染色、被服整理。「被服整理学(共著)」(酒井書店・育英堂)などの著作、「布帛のはっ水性能評価」シリーズ(繊維製品消費科学会 Vol.34(H5),36,37,38,39,40(H11))などの論文あり。

東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞いを申し上げるとともに,一日も早い回復を祈願致します。

まず,服を着る目的を考えてみますと,

  1. 保健衛生のため(気候変動などの外界の変化から身を守る)
  2. 整容装飾のため(おしゃれ)
  3. 秩序維持(制服,礼服)
  4. 活動効率アップ(作業着,休養着)
のためと分類されますが,災害時には1.が最も大切です。3月11日以降は,東北地方はまだまだ寒い日が続きました。寒さから身を守るための衣服の保温性が問題になります。

同じような机やロッカーでも,金属製のものに触れた時のほうが,木製のものに触れた時よりも冷たく感じるでしょう。これは,金属の熱伝導率が極めて大きいために,指の熱が金属を伝わってすばやく逃げていくために冷たく感じるのです。熱伝導率の小さい空気のそれを1とした場合の相対熱伝導率は,大雑把に金属10000,水25,繊維10程度です。服地の場合は繊維間や生地間に空気層を含むため,被服の相対熱伝導率は一般に2程度に下がり,保温性が増します。服地の内部にたくさん空気を含ませるほどこの値は1に近づいていきます。つまり,「空気を着ると暖かい」わけです。重ね着をする場合,含気量の高い(嵩高な)服を内側に, 組織の密な( 通気性の低い) 服を外側に着用すれば, 衣服内に取り込んだ逃げない空気量が多くなるために,保温性が高まります。服が濡れたり湿ったりすると, 被服中の空気も湿って, 水の熱伝導性の大きいことが効いてきて,保温性が大幅に低下します。服は乾燥させておきましょう。速乾性( 速く乾く性質) は, 繊維の公定水分率に関係します。水分率は天然繊維で1 0 % 程度, ナイロン4%, ポリエステル0 . 4%ですから,ポリエステル繊維の速乾性がとても大きいことが分かります。まもなく蒸し暑い梅雨期に入ります。逆に涼しい衣服としては,通気性の大きい( 織編組織の荒い) ,接触冷感のある( 麻のように吸湿性が大きく硬い繊維) のものが適しています。

次に火災時の服のことを考えましょう。火災時には, 服が燃えることによる火傷と服が燃えるときに出す有毒ガスが問題となります。衣料用繊維は,易燃性繊維( 容易に燃え広がる: 綿,レーヨン,アセテート, アクリル) , 可燃性繊維( ゆっくり燃える: 羊毛, ナイロン, ポリエステル) , 難燃性繊維( 炎を遠ざけると消える: 塩化ビニル) などに分類されますが, 一般衣料の多くは, 火が近づくと燃えます。合繊は燃える時の熱で溶融して肌に付着すると火傷がひどくなりますので注意が必要です。燃焼ガスの毒性は, アクリルが比較的強いようですので注意が必要です。以上, 少ししでもお役に立つことがあれば幸いです。

Editor: 山下 伸夫
Updated Date: 2011-06-28 20:35:21