Updated Date: 2017-02-02 20:36:13

防災のための住まい・まちづくり

聖徳大学短期大学部総合文化学科 准教授 蓑輪 裕子

著者プロフィール
1989年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。㈱市浦都市開発・建築コンサルタンツ、(財)東京都老人総合研究所を経て、現職。専門は建築計画・住居学(主として高齢者・障がい者の住まい・まちづくり)。「住まいとインテリアデザイン(共著)」(彰国社)などの著書、「高齢者のための住宅改善助成制度に関する研究」(日本建築学会計画系論文集(493)109-115/1997)などの論文あり。

はじめにこのたびの東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

この未曽有の災害の中、被災者の方々が自らを律して懸命に耐え忍んでいらっしゃる姿に心が痛む思いである。一刻も早く穏やかな日を取り戻せるよう、遠方で生活する私たちも精一杯協力したい。復興される住まいやまちが、国の全面的な支援のもと、最先端の知見と技術を駆使して、人にも環境にも優しいまちになることを願う。それは物理的な快適さと同時に、住民の方々が生きがいを持って生活できるふるさとの復興であってほしいと思う。

さて、私は日頃、高齢者・障がい者のための住宅・まちづくりに関する研究や実践活動をしており、本学では住居学や福祉住環境の授業を担当している。建築分野で仕事をしている一員として、今、特に伝えたいことは、「防災のための住まい・まちづくりは一人ひとりの意識から始まる」ということである。実は授業で学生に家庭での防災対策を聞くと、まったく意識していない答えが多いのに驚く。そこでこの場を借りて、防災のための住まい・まちづくりの留意点を簡単に紹介したい。

防災のためには、まず自分の生活圏でどのような災害が起こる可能性があるか知ることから始まる。地震、洪水、土砂崩れ、地盤の液状化等、様々な自然災害のうち、身近で予想される被害をこの機会に調べておくことをお勧めする。各自治体で危険地域を示すハザードマップが作られており、インターネットでも様々な防災関連情報が手に入る。ただし今回の震災の大きな教訓として、実際の災害はこれらの想定以上のこともあり、臨機応変な判断が必要とされるということを忘れてはならない。

東日本大震災は、地震による津波の被害が甚大であったが、1995年の阪神淡路大震災は活断層がずれて起きる直下型で、死亡原因の約7割が住宅の倒壊による圧死だった。ドーンと突き上げられるような激しい衝撃で、古い木造住宅は柱が土台から抜けたり、家具や家電製品が家の中を飛ぶ勢いであった。

木造住宅で被害が大きくなるポイントは何か?まずあげられるのは、建設年度である。1981年5月以前の旧耐震基準で建てられた建物は、特に要注意だと言われている。その他にも、壁の量やバランス、屋根の重さ、基礎の頑丈さ等様々なチェック項目がある。国は耐震性の向上に力を入れていて、耐震診断や耐震改修の助成制度がある。ぜひ地元の自治体に相談して、住まいの耐震化に取り組んでほしい。住宅内部については、家具・家電製品の配置の工夫や固定およびガラスの飛散防止がポイントである。たとえば寝室で寝ている頭の部分にたんすが倒れないようにする、ガラスは飛散防止フィルムを張るなど。窓のカーテンを閉めるだけでも飛散防止に繋がる。

通学・通勤等の道筋では、ブロック塀や自動販売機が倒れたり、ガラスや瓦屋根が落ちてくる心配がある。これらの事故の加害者にならないよう、自宅をチェックしておく必要もある。その他、高層建築は上層階ほど揺れが大きいし、エレベーターが使えなくなる場合もある。安全性や利便性等、何を優先して住居を選ぶかは各人それぞれの責任でもある。

自主防災組織作りも必須だ。災害弱者のために、支援の必要な人と支援できる人をあらかじめグループにしておくとよい。ただし、視覚障害の方や車いす利用の方に話を聞くと、避難は絶対にしたくないと考える人も多い。トイレが不便、迷惑をかけたくない等、理由はそれぞれである。個々の事情に合わせて具体的な対策を考える必要がありそうだ。

安全・安心なまちづくりは、物理的な面に加えて人的な側面も大きい。震災を通じて、いざという時の住民同士の支え合いがいかに重要か、改めて気付かされる。

Editor: 山下 伸夫
Updated Date: 2011-06-28 20:36:22